以下と同内容の同性婚人権救済申立書【概要版】をダウンロードできます。
印刷用にお使いください。
また、English versionもあります。English versionは、LGBT弁護士・支援者ネットワーク「LLAN」(LGBT Lawyers & Allies Network)により翻訳いただきました。感謝申し上げます。なお、LGBT弁護士・支援者ネットワーク「LLAN」は、LGBT支援法律家ネットワークとは別のネットワークです。
申 立 の 趣 旨
貴連合会が、
1 被申立人内閣総理大臣及び同法務大臣に対し、同性婚法案を国会に提出するよう勧告する
2 被申立人衆議院議長及び同参議院議長に対し、同性婚法を制定するよう勧告する
旨の人権救済を求める。
申 立 の 理 由
第1 本件の概要
本件は、現在日本において同性婚が認められていないことが、同性愛者、両性愛者等、同性婚を求める者に対する人権侵害にあたることから、内閣総理大臣及び法務大臣に対し同性婚法案を国会に提出すること、並びに、衆議院及び参議院に対し同性婚法を制定することにより、人権救済すべく、これらの勧告を求めて申立てに及んだものです。
第2 申立人ら
申立人らは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)など、日本で同性婚が法制化された場合に、同性婚をすることを希望する可能性があると考える者です。
第3 性的指向について
- 性的指向とは、恋愛や性愛といった親密さの感情や欲望の向かう方向を指します。
- 社会における人口としては、異性愛者が多数者(マジョリティ)であり、同性愛者や両性愛者は少数者(マイノリティ)です。そのため、同性愛は、時にしてその「原因」が関心の対象になる事がありますが、結局のところ、同性愛の「原因」はわかっていません。とはいえ性愛は、人が生きていく上で、人格の本質とも密接に関連した
極めて大切な要素です。この点、多くの申立人が、陳述書の中でも、自らにとっての同性パートナーの大切さ、意義を述べています。
「家族以上に大事な存在です。生きがいです。いなくてはならない存在です。・・・お互い精神的に辛いことがあったときには、励ましあって、支えていきたい存在です。」 など
もちろん、他者との深い親密さは時に裏返しの弊害(ドメスティック・バイオレンス等)を生むこともあるにせよ、総体としては、他者との親密な関係は、異性愛の場合は大切なものとして扱われ、社会的にも、婚姻制度に象徴されるように、法的な保護の対象に位置付けられています。 - 厚生労働省の研究班による性的指向の調査によれば、ゲイ・バイセクシュアル男性は、国内の男性の中で3~5%いると推定されています。つまり、学校の1クラスに約1名はいることになります。レズビアン・バイセクシュアル女性についても同程度の数字が報告されています。
ところが、異性愛が当然とされ、同性愛に対し差別・偏見がある社会の中では、同性愛者は、異性愛者として振る舞わざるをえなくなり、強い心理的葛藤をもたらす事が多くあります。こうした結果、同性愛者を含む性的少数者は、自身のメンタルヘルスを悪化させたり、自殺念慮や自殺未遂の割合が高いことが報告されています。政府の自殺総合対策大綱でも、同性愛者を含む性的マイノリティの自殺念慮の割合等の高さについて言及されており、2015年3月に発足した性的少数者への差別解消を目指す超党派の国会議員連盟でも、自殺念慮の割合の高さが着目されています。申立人の中にも、同性に対する恋愛感情の自覚が自己否定の感情となり、自殺念慮・自殺未遂にすら繋がった実例が多々見られます。
「私は子供の頃から女の子が好きでした。その事を自覚したと同時に私の中にある『常識』は私を殺そうとしました。初めて自殺未遂をしました。私は9歳でした。」 など - 同性愛を隠すと内面に心理的葛藤を覚えてメンタルヘルスを悪化させ、他方で、同性愛を公言しても、差別・偏見に遭うリスクを負います。このように、同性愛に対する不可視化と差別・偏見は表裏一体の関係にあり、少数者(マイノリティ)の当事者にとっては生きづらく、声をあげにくい状況が続いてきました。
第4 日本における同性愛を巡る状況
- 性的少数者の両親は、ほぼ全ての場合において、性的多数者です。例えば、民族差別や人種差別の場合には、少なくとも親や兄弟などの家族は同じ境遇にあるものとして味方となるといえます。しかし、多くの同性愛者が自己の性的指向を自覚する際には、家族からも孤立した状態から出発します。同性愛者などの性的少数者は、本来的に孤立状態に陥りやすいのです。
性愛は、人が生きていく上で、社会において他者との親密な関係性を育み、自己の精神的支えともなるものです。このことは異性愛者と同性愛者・両性愛者とで違いはありません。しかし、同性愛者にとっては、他者と継続的な恋人関係になることも困難な時代がありました。今日こそ同性愛者・両性愛者に対する理解の輪は広がっているものの、未だに差別や偏見は根強いため、このような困難性が解消されているわけではないことにも注意が必要です。 - 同性愛については「治療」や「非行」の対象とされていた時代もありましたが、アメリカ精神医学会やWHOが異常・倒錯・疾患等ではないとし、日本精神神経学会もこれに続いています。また、1994年に文部省(当時)も、「性非行」の項目から同性愛を除外しました。さらに、文部科学省は、2015年4月30日、同性愛・両性愛を含む性的マイノリティの児童生徒についての相談体制等の充実を図るように、教育委員会などに通知を出し、矯正が必要な非行少年からケアが必要な児童生徒であるとの考えに大きく変化しました。
- これまで同性愛は差別・偏見の対象でしたが、近年そのような状況は変わりつつあります。
当事者による自助団体やセクシュアルマイノリティ支援を目的としたNPO法人などによる相談業務、パレード・LGBT成人式などの各種イベントの開催、地方自治体による支援、企業による支援なども活発になってきています。また、権利擁護の面でも、府中青年の家事件の裁判例や、石原慎太郎都知事の差別発言に対する人権救済申立てなどで、人権問題として意識されるようになりました。 - 特に、この2、3年は、結婚を望む同性カップルの存在が広く顕在化・可視化されています。結婚式を行う同性カップルや、市役所に婚姻届を提出した同性カップルもいます(憲法24条1項に違反するなどの理由でいずれも不受理)。
また、2015年3月31日には、渋谷区で、同性パートナーシップ証明書の発行等を内容とする条例が可決されました。行政が同性カップルの存在を認め、その関係性を証明すること
